ラジカセ修理

年配者が楽しみにしている、カラオケ教室では今でもテープ・レコーダーが活用されている。
何故なら、歌の先生が教材として配布する音楽がカセット・テープだからだ。
年老いた母が長年活用してきた安物のカセット・テープレコーダーが突然動かなくなってしまい、気落ちしていたので、新品購入を前提にして、とりあえずは、修理してみることにした。
何せ、元々が安物なので修理よりは新品購入の方が分が良いことは明白なのだが、一つ試してみようと思い立った。

中華製ラジカセなのだが、その基本性能には申し分なく、充電池改造にも十分対応可能な、AC100V端子まで付いている優れもの。
年配者が迷わず使用出来るように購入時にラベラーで日本語表記とした。

乾電池仕様のモノを改造し、内部AC100Vトランスからの9Vからニッカド電池に充電出来るように改造もしておいた。
しかし、長年の使用でカセットのモーターがまったく回らなくなってしまった。




先ずはケースを外して内部の様子を見てみた。
安物とは思えないしっかりした電子回路基板が観えた。
ラジオなども本格的な回路となっており、単純に安いからといって捨ててしまうのは勿体無いラジカセだ。

カセット本体もしっかりした作りでアッセンブリーされた高品位なモノが使われていた。
中華といっても、単に安い組み立て賃を利用したモノなのだろう。
製品本来の性能は優れもの。
特筆すべきは省電力設計。
単なるラジオよりも電気を食わない。





ラジカセの心臓部である、駆動モーターをようやく取り出した。

これもメーカーのアッセンブリー製品らしく、カセット部分が一つのパーツとして成立していた。

駆動モーターの回転制御回路は、この手のモノにはモーター内部回路としているものが多く、これも例外ではなくモーターの裏ブタを開けると回転制御電子回路が入っていた。













モーターの裏ブタを外した状態。

非常に簡単な回路でできている。

また、コストダウンの為か?エンプラを多用した造りとなっていた。

他社メーカー製のものでもさほど違いは無い構成だと思う。















ラジカセのテープが回らない原因が、この回路。
駆動系制御基板の中のIC AN6651 が壊れていた。

その原因をやはり知りたくなり、長時間使用で壊れるものなのかどうか、を調査してみた。










先ずは壊れたIC AN6651を交換し、常温になってから調査してみた。

その時の温度分布が、左図。
サーモ・グラフィーの温度分布も均一な色温度として読み取れる。












ここからが本題である、壊れた原因となる事象を探ってみた。

先ず、壊れたIC AN6651を新品に交換し、簡単な動作確認をした後、10分ほどカセット・テープを動作させてモーター周囲に異常が無いかを確かめた。

正常動作確認後、原因究明を行った。

長時間カセット・テープを回すことによる回転制御回路内のIC AN6651が非常に高温になっている事が判った。
そこで、どれほどの温度変化なのかを調べる為に、サーモグラフィーにて制御回路の温度上昇の具合を調べてみた。


なんと、約5分程度のカセット・テープ動作でICの温度が軽く62℃を超えてしまっていた。
これだけ高温になる部品をモーターの裏ブタ内に収納していたのでは、たまったものではないだろう。
それも、長期に渡った使用ではなおのことだ。



そこで、この回転制御IC AN6651に簡易ヒートシンクを取り付けて、過度な温度上昇に対処してみた。

手持ちの関係で、手元にあったちょうど良い大きさのアルミ圧着端子3ヶを用いてヒートシンク代わりとしてみた。

なにか、野暮ったい不恰好さがあるが、それも良し、である。










不恰好なヒートシンクの割には、その放熱の役目を果たしているようで、サーモグラフィーに写る温度分布には極端な温度の偏りも見られず、長時間の動作でも温度上昇は一定以上、上がることは無くなった。

これで気兼ねなく、ケースの中に入れることが出来るというものです。

改造前には触れないほどのIC温度でしたが、改造後は、いつまででも触っていられました。
むしろ、暖かさが心地よいほどでした。










ラジカセ用モーター駆動回路

左図が回路基板から読み取ったモーター制御回路図です。
すべての動作をIC一つに任せている簡単な回路でした。
その為か、負荷が大きくなると簡単に壊れてしまうのでしょう。

このICを交換してモーターが動くようになったとしても、経年変化によるモーター自体の劣化も考えられますので注意が必要です。
このような事象が起こる場合、ほぼ間違いなくモーター起動時に大電流が流れていることが考えられます。
そのような場合では、このICを幾度交換したとしてもムダです。
そこまで経年変化によるモーターの劣化が進んでしまったら、強制的にモーターが回りだす時の大電流に耐えるような工夫が必要です。

簡単な方法は、LM317などの可変ICを用いてしまうのが一番です。


母の大切なラジカセの故障の原因は、熱によるものだった事が判りました。
超簡単に修理出来て、ホッとしています。

もしも、修理ができず、また新たにラジカセを購入しようものなら、またまた、最初から操作を教え、老眼でもしっかり見えるようにラベラーを新たに貼り付けなければなりません。

その苦労に見合う以上の成果があったと信じています。

これで毎週楽しみにしているカラオケが出来ますね。

良かった、よかった。

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